「和菓子」と「洋菓子」

verite vol.5 2016年発刊

「誰が」「何のために」食べる?お菓子の発祥に歴史あり!

四季折々のわび・さびを表現した繊細な和菓子、フレッシュで華やかで食欲をかきたてられる洋菓子、それぞれ見た目も味もまったく異なります。それもそのはず、生まれた理由が違うんですから! お菓子がつくられた時代背景をたどっていくと、その土地に住み時代を切り拓いてきた人々の暮らしも見えてきます。


和菓子

和菓子
外来のお菓子を取り入れ、進化した和菓子。

日本固有のお菓子がつくられたのは、大和時代だと言われています。だんごや餅がそれにあたります。その後、奈良・平安時代に遣隋使や遣唐使が中国から八種の唐菓子と十四種の果餅を持ち帰り、その製法をもとに簡単な穀物の加工品ではないお菓子がつくられるように。鎌倉・室町時代には砂糖が輸入され、茶の栽培とともに茶菓子がつくられるようになり、和菓子の原型となりました。

地域や階級、人々の生活に密着して発展。

日本のお菓子に大変革があったのは、安土・桃山時代。ポルトガルからカステラなど南蛮菓子が持ち込まれ長崎から全国へ広まりました。一方、日本古来の和菓子は茶道とともに上流階級の「京菓子」として発展。政治経済の中心が江戸に移ると、生活に密着したお菓子が数多くつくられるようになりました。季節の行事や人生の節目に欠かせない和菓子が、その行事のあり方とともに地域特有のものとして大切に伝承されています。地域に根づいた老舗の和菓子屋が多いのはこのためです。

洋菓子

洋菓子
洋菓子の発祥は、古代エジプトに遡る!

古代エジプトでウテン・ト(パイ生地)がつくられたのが洋菓子の始まりだと言われています。古代ローマでは皿として使いつつ食べられるトゥールト(タルト生地)がつくられました。どれも始めは甘味がなく、食事だったようです。マカロンは、肉を食べない修道女たちがアーモンドから栄養をとるためにつくられたものだと言われています。これらに砂糖が加えられお菓子として発展したのです。

教会とお菓子屋の密接な関係とは。

オーストリアやドイツで発展したお菓子は、マリー・アントワネットとともにフランスへ渡った菓子職人によって華やかに進化しました。宮廷や都市部では繊細なお菓子として、地方では素朴なお菓子として、引き継がれています。フランスではどんな小さな町にも教会とお菓子屋さんがあります。それは日曜日はミサに出掛けて帰りにお菓子を買う習慣があるから。洋菓子は宗教と密接な関係があるものだと言えます。

ショートケーキは、ある意味「和菓子」なんです。

ケーキ屋に行けば必ずと言っていいほどショーケースに並んでいるイチゴのショートケーキ、実は日本人が生み出したものだと知っていましたか?

ポルトガル由来のカステラをもとにふわふわのスポンジケーキを開発し、生クリームをサンドしてフルーツを飾るという絶妙な組み合わせを生み出したのは、日本人だったのです。ある意味、和菓子ですね。こういった豆知識も、パティシエをめざす人にはケーキに関する知識のひとつとして身につけてほしいと思っています。

私は専門のフランス菓子を中心に、洋菓子の製法ばかりでなく、その背景にある歴史や文化も教えています。パティシエとして新たなケーキを開発するときにはあらゆる知識が役立ちますし、お客様と接するときにコミュニケーションをとるきっかけにもなるからです。

修文ではこのほか店舗経営や販売サービスについての授業もありますから、将来は自分の店を持つことも視野に入れながら、製菓技術を身につけてほしいですね。

相墨 一彦 准教授

相墨 一彦 准教授